「東京民報」2022年1月16日付に、日本共産党の橋本しげき武蔵野市議会議員が、武蔵野市の住民投票条例案について寄稿しました。全文を紹介します。


多様性認め合う武蔵野市に 住民投票条例制定めざす

武蔵野市議会は昨年12月本会議で、松下玲子市長が提出した日本人と外国人が同条件で参加できる住民投票条例案を立憲、共産などの賛成11、自民、公明などの反対14の反対多数で否決しました。成立すれば全国3例目となる国籍を問わない制度案として注目されました。日本共産党の橋本しげき市議に、同条例案の意義や論戦などについて寄稿してもらいました。

寄稿:日本共産党市議 橋本しげき

 武蔵野市の住民投票条例案は、いわゆる「常設型」として、3か月以上武蔵野市に住所のある18歳以上の市民(外国籍も含む)に対し、住民投票権を保障するものです。

 「市政に関する重要事項」について、投票資格者の4分の1以上の署名が集まれば、議会の議決を必要とせずに住民投票が行われます。

事実に反する攻撃

 条例に反する右翼や自民党は、11月になって突然、議論が拙速だと主張し始めました。右翼団体が各地から連日押し寄せ、街宣車が市役所前や市長宅の前で大音量で騒ぎ立てるなど、異様な光景が展開されました。

 しかし実際は、拙速どころか、時間をかけて議論が行われてきたのです。住民投票条例の前段である武蔵野市自治基本条例に関する懇談会以来、5年間議論されてきました。住民投票条例については、昨年2月と8月の総務委員会での行政報告、パブリックコメント募集、市民意見交換会、市民2000人対象の無作為抽出アンケート実施など、必要な手続きを踏んで、かなり丁寧に議論されてきました。

 住民投票条例での最大の争点とされたのが、国籍を問わず、武蔵野市に3か月以上住民登録のある18歳以上の市民が投票資格者となった点です。

 私は、12月13日の総務委員会.質疑で、外国籍住民に住民投票権を保障することは、法的にも実際上も何の問題もないことを明らかにしました。

 自治体の条例に基づく住民投票は、投票結果に法的拘束力はありません。自治基本条例では「住民投票の結果を尊重する」と規定されています。憲法でも、地方自治法でも、条例に基づく住民投票を禁止する条項はなく、何ら問題はありません。

 一部のメディアは、住民投票について、「広義の参政権」や「実質的な参政権」などと、外国人参政権と混同させようとしました。しかし、条例に基づく住民投票と選挙は、結果の法的拘束力など、全く違うものです。

攻撃の根底に差別

 憲法第16条では、「何人も・・・平穏に請願する権利を有し」と請願権を保障しています。住民投票は住民の意見表明であり、請願権の行使と言えます。しかも「何人も」とありますから、請願は日本国民だけでなく、外国人もできると解されており、住民投票の対象から外国人を排除することのほうが不自然です。外国籍の住民に対して、日本国籍の住民と違う線引きを持ち込むことは、説明がつきません。

 外国人も同じ地域社会に暮らす住民ですから、意見を表明できることは当然です。住民投票条例に反対する右翼の根底に、外国人に対する差別意識が見えてきます。

 住民投票条例ができると武蔵野市が外国人に乗っ取られるという言説があります。全国でこれまでに約200回も外国籍の住民が参加した住民投票が行われていますが、外国人に乗っ取られた自治体ありません。

 住民投票条例は、より進んだ市民参加に挑戦するまち、多様性を認め合い、平和と文化を育むまち武蔵野を目指す取り組みを進めるものでした。  反対の論拠はすでに失われました。住民投票条例は、全会一致で制定された自治基本条例で制定予定されています。日本共産党市議団は、住民投票条例を必ず制定させるために、市民と力を合わせて引き続き頑張る決意です。