武蔵野市住民投票条例案は2021年12月21日、市議会本会議で採決が行われ、賛成少数で否決されました。

賛成討論を会派に属さない議員の桜井夏来議員・山本ひとみ議員、自治と共生の内山さとこ議員、立憲民主ネットの薮原太郎議員、日本共産党武蔵野市議団の橋本しげき議員が行いました。反対討論を自由民主・市民クラブの道場ひでのり議員、市議会公明党の落合勝利議員、ワクワクはたらくの本多夏帆議員が行いました。


◆橋本議員の賛成討論を掲載したビラ (PDF)はこちら

日本共産党・橋本しげき市議会議員 住民投票条例への賛成討論(速報版)

 私は、日本共産党武蔵野市議団を代表して、ただ今議題となりました、議案第52号「武蔵野市自治基本条例の一部を改正する条例」と議案第53号「武蔵野市住民投票条例」に賛成の立場から討論いたします。
 全会一致で制定され昨年4月に施行された武蔵野市自治基本条例の第19条を一部改正し、武蔵野市住民投票条例を制定します。住民投票条例は、いわゆる「常設型」の住民投票条例 として、3カ月以上武蔵野市に住所のある18歳以上の市民(外国籍も含む)に対し、住民投票権を保障するものです。配置分合又は境界変更の場合は必ず住民投票が行われますが、それ以外にも「市政に関する重要事項」について、投票資格者の4分の1以上の署名が集まれば、議会の議決を必要とせずに住民投票が行われるものです。投票総数が投票資格者総数の2分の1以上集まれば、投票は成立となります。

 住民投票条例については、その前段である武蔵野市自治基本条例(仮称)に関する懇談会が2016年11月に設置されてから5年をかけて議論がされてきました。この自治基本条例(仮称)に関する懇談会は、市議会議員2名を含む構成であり、22回開催されています。
 住民投票条例については、かなり丁寧な議論が行われてきました。今年2月に示された骨子案については、市議会総務委員会で行政報告、パブリックコメントの募集、市議会各会派及び市職員からの意見聴取、議長主催の市議会議員との勉強会などが実施されました。3月には市民意見交換会、市民2000名を対象にした無作為抽出市民アンケートの実施、6月にはコミセン4カ所での意見交換会などを経て、8月に素案が示されました。この素案に対しても、市議会総務委員会で行政報告、パブリックコメントの募集、市議会各会派及び市職員からの意見聴取、市民意見交換会が実施されました。これらを経て、今定例会に議案として提出さ れています。骨子案と素案それぞれにパブリックコメントが行われたということは、条例制定の過程としては過去にあまり例がないと言われています。私は、決して拙速ではなく、必要な手続きを踏んで丁寧な議論が行われてきたと考えています。
 住民投票条例に反対する政党の方などは、11月になって、突然、議論が拙速だと主張されました。拙速どころか、必要な手順を踏んで行われてきたものです。これ程反対するならば、なぜ、10月の市長選挙で争点化しなかったのでしょうか。松下市長は、住民投票条例の制定を市長選の公約に掲げていましたが、それにこれ程強く反対であるならば、市長選で争点化する責任があったのは、今、住民投票条例に反対している別の候補を応援された側の政党にあるのではないでしょうか。
 反対する自由民主・市民クラブの対応も支離滅裂なものでした。11月16日の議会運営委員会では、住民投票条例の議案上程・総務委員会への付託に賛成しておきながら、24日の代表質問では、以下のように主張されました。「今議会に上程するのは一旦立ち止まり、市民の意見をしっかり聴いた上で、修正すべきところは修正し、再度上程し直すことを強く求め」ると述べられました。これは、自らの会派も賛成して決めた住民投票条例の今定例会への上程と総務委員会への付託をひっくり返すことを主張したものです。まさに議会運営を破壊するものだということを強く指摘しなければなりません。なぜ、こうした支離滅裂な態度に出たのか。それは、 自らの主張に道理と一貫性がないからです。私は、こうしたやり方に強く抗議するものです。
 13日の総務委員会では、拙速だとして反対を主張される議員からは、具体的にどうすれば議論が煮詰まった、周知がされた、という段階になるのかについて、具体的な提案は何もありませんでした。私は、市民への周知が足りないという議論を主張される方は、ではどうしたらよいのか、具体的な提案をされるべきだと思います。

 次に、今回の住民投票条例で最大の争点となっているのが、国籍にかかわらず、武蔵野市に3カ月以上住民登録のある18歳以上の市民が住民投票の投票資格者となっている点です。私は、13日に行われた総務委員会の質疑の中で、外国籍の住民に住民投票権を保障することは、法的にも実際上も何の問題がないことを多面的に明らかにいたしました。
 まず、住民投票には、「拘束型」と「諮問型」があります。「拘束型」の例は、地方自治法に基づく直接請求である議会の解散・議員や長の解職──いわゆるリコール──についての住民投票などであり、このような「拘束型」の住民投票は、投票結果に法的拘束力がありますから、市長などは投票結果に従わなければなりません。今回の武蔵野市住民投票条例のように、自治体の条例に基づく住民投票は、「諮問型」の住民投票といわれ、投票結果に法的拘束力はありません。自治基本条例第19条3項では、「住民投票条例の結果を尊重する」と規定されています。那覇地裁の2000年5月9日の判決では、「尊重義務規定に依拠して、市長に市民投票における有効投票の賛否いずれか過半数の意思に従うべき法的義務があるとまで解することはできず、……本件住民投票の結果を参考とするよう要請しているにすぎないというべきである」との判決が出ています。判決は、諮問型の住民投票を認める立場にあります。学者の通説も同じです。憲法でも、地方自治法でも、条例に基づく住民投票を禁止する条項はありません。よって、本条例案の規定は何ら憲法上も法律上も問題がありません。
 また、12月3日付の「産経新聞」では、「武蔵野市が条例案で日本人と外国人を区別せずに認めた住民投票の投票権について、衆院法制局が『地方公共団体の選挙の選挙権に匹敵するものとなり得る』として、外国人参政権を代替しかねないという懸念を裏付ける見解をまとめていたことが2日、明らかになった」と報道しました。同新聞のインタビューに答えて、自民党の長島衆院議員は、「法制局も指摘する通り『法的効果』だ」、「住民投票は政治的な意思決定プロセスに影響を与えるわけで、広義の参政権にあたる」と述べています。
 私は、日本共産党の山添拓事務所を通じて、衆院法制局に問い合わせました。その結果、「産経新聞」の報道に対して、「正式に抗議したいぐらいだ」、「複数の見解を示したのを切り取られた」、「衆院法制局として、一部の見解を助長するような発信はしない」とのことでした。条例に基づく住民投票と選挙とは、結果の法的拘束力など、全く違うものです。住民投票について、「広義の参政権」だとか「実質的な参政権」などと「参政権」という言葉を使うことで、住民投票と選挙を混同させて市民をミスリードしようとすることはやめるべきです。
 憲法第16条では、請願権を規定しています。「何人も、……平穏に請願する権利を有し」とあります。「何人も」とありますから、通説は、請願は日本国民だけでなく、外国人もすることができると解しています。政府見解も同じです。なぜなら、請願権は単なる希望などの表明であって、選挙権と異なるからです。今回の住民投票条例との関係でいうと、住民の意見表明であり、請願権の行使と言えます。「何人も」請願できるので、住民投票の対象から外国人を排除することのほうが不自然です。外国人も含めて住民投票権者として保障するのが自然であり、まさに日本国憲法にかなうものであると言えます。

 入国管理法・入国管理特例法が改正され、「外国人登録法」が廃止されるとともに、住民基本台帳法が改正され、2012年7月9日に施行されました。これにより、一定の外国人住民も日本人と同様に住民票が作成されるようになりました。つまり、外国人の住民登録制度ができたわけです。外国人も住民登録されるようになりましたので、在留カードを発行され適法に滞在している外国人が把握されるようになりました。ですから、住民票にのっている同じ住民だということになり、外国人を日本人と差別する理由はますますなくなってきています。
 3ヶ月の居住がダメで、1年ならいいのか、3年なのか、5年なのか、永住外国人なら良いのか、という線引きは、どれも合理的な説明がつかないと思われます。
 住民投票条例の「骨子案」14ページで、「選挙は人を選ぶ拘束型の制度であるのに対して、住民投票は市政の重要事項について住民の意思を確認する諮問型の制度であるため、性質が大きく異なります。そのため、住民投票において、本市で共に生活している外国籍の人を含めないという合理的な理由はないと判断しました」とあります。これは、大変筋が通った話だと考えます。

 外国人も同じコミュニティーに暮らす住民であるわけですから、地域の問題に意見を表明することができることは当然のことです。住民投票権と参政権は明確に分けて考えるべきものです。住民投票の結果について法的拘束力はもたないものの、投票結果を尊重するとした条例案は、より進んだ市民参加に挑戦するまち、多様性を認め合い、平和と文化を育むまち武蔵野をめざす取り組みとして、日本国憲法の趣旨を十分ふまえたものだと考えます。

 武蔵野市のように、外国籍の市民にも日本人と同様な条件で住民投票権を保障している自治体は豊中市と逗子市であり、武蔵野市は全国で3例目だといわれています。ここだけ見ると、武蔵野市は全国であまり例のないことを行おうとしていると見えるかもしれません。しかし、外国籍の方が住民投票に参加した例はこれまでにたくさんあります。戦後、全国で住民投票は約1700件行われています。そのうち、自治体の条例に基づく住民投票、つまり住民投票の結果に法的拘束力のない住民投票ですが、これは、少なくとも428件行われています。外国人も投票に参加できる住民投票条例は、少なくとも247件制定されており、そのうち実際に住民投票が実施されたのは少なくとも197件です。つまり、全国ですでに約200回も外国人も投票に参加した住民投票が実施されているのです。武蔵野市は全国であまり例のないようなことをしようとしているのではありません。全国ですでに行われ、多数の実績があることを武蔵野市でも実現しようということにすぎません。
 住民投票条例ができると武蔵野市が外国人に乗っ取られるという言説がいまだにありますが、外国人も含み過去約200回行われた住民投票の事例の中で、外国人に乗っ取られた自治体があるなら、1つでも例を挙げるべきだと思います。挙げられるわけがありません。
 この間、右翼団体が市内に押し寄せて、反対を主張していますが、こうした威圧的なやり方に屈することがあってはなりません。無理が通れば道理引っこむということがあってはなりません。反対を主張してきた議員の方々も、その論拠をすでに失いました。住民投票条例は、全会一致で制定された自治基本条例第19条によって制定が予定されているものです。住民投票条例は制定することになっているのです。ぜひ、時間をかけて議論してきたこの住民投票条例を必ず制定させようではありませんか。
 以上で、議案第52号と議案第53号に賛成の討論を終わります。なお、議案第52号と議案第53号に賛成のため、この後の取り扱いとなります陳受3第19号には反対をいたします。以上で討論を終わります。

(以上は速報版です。議会議事録に後日掲載されたものが正式な討論となります)。